コラム:【11月1日は国際クシノマヴロデー】「すっぱい黒」が世界のワイン通を唸らせる理由 🍷

1831年、フランス外交官が「ブルゴーニュに勝る」と書いたワイン
今日、11月1日は「国際クシノマヴロデー」。ギリシャ北部の生産者団体「Winemakers of Northern Greece」(テッサロニキ本拠)が2019年に始めた、まだ新しい記念日です。
きっかけは、ひとつの疑問でした。
バローロやブルゴーニュに負けない赤ワインなのに、なぜ世界に知られていないのか?
じつはこの疑問、200年前から先人が抱いています。1831年、フランスの外交官エスプリ・マリー・クズネリは、ナウサのワインをブルゴーニュに例え、「オスマン帝国で最も優れたワイン」と評しました(Decanter誌より)。
それから約200年——いまようやく、世界のレストランのワインリストに載り始めた、超におくる存在なんです。
■「酸っぱい黒」という名前の落差
クシノマヴロはギリシャ語で「クシノ=酸」「マヴロ=黒」。名前のとおり酸が強く、タンニンもしっかりした赤ワインになります。
ところが色は意外なほど淡く、透けるようなルビー色。
年月が経つとオレンジがかった色に変わり、トリュフや革、干しトマトのような香りが顔を出します。
見た目は軽そうなのに、中身は長期熟成型。
Decanter誌はこの品種を「ギリシャの畑のプリマドンナ」と呼びます——扱いが難しく、良い畑と良い年でしか本領を出さない、けれど、その実力は本物。
この落差が、この品種のいちばん面白いところです。
■生まれたのは、北ギリシャ。
4つのアペラシオンで性格が違う
本拠地はナウサ。オリンポス山ではなく、ヴェルミオ山の南東斜面(海抜150〜300m)に畑が広がります。ナウサの赤は100%クシノマヴロであることが規定で、産地の個性がそのままボトルに映ります。
ほかの産地も個性派ぞろいです。
アミンデオ:海抜700m級の高地。冷涼で軽やか香り高く、ロゼやスパークリングも造る。
樹齢の高い自根の古木が残る土地グメニッサ:地元品種ネゴスカを20%以上ブレンドして丸みをプラス
ラプサニ:オリンポス山の斜面で、地元品種クラサト+スタブロトと混ぜる
深掘りポイント:クシノマヴロは厚い皮を持ち乾燥に強い品種で、気候変動時代に適性があると注目されています。
なんと2021年にはフランス・コート・ド・プロヴァンスが栽培を許可——ギリシャ発の品種が南フランスのアペラション規定に入ったんです。
植栽は北マケドニア、オーストラリア、中国にも広がっています。
■味わいは「赤ワインの酸っぱさ」を楽しむ
ボディ:ミディアム〜フル
若いうち:サワーチェリー、クランベリー、いちご+トマト、ブラックオリーブ、バラの香り
熟成すると:干しトマト、乾燥ハーブ、革、タバコ、トリュフ
似ているワイン:バローロ、ブルゴーニュ、キャンティ好きならハマる
飲み頃:モダンなスタイルはヴィンテージから3〜5年、伝統的なナウサは20年以上の熟成も
合わせるならラムのロースト、ムサカ、トマト煮込み、きのこのソテー、熟成チーズ。酸が強いので油っこい料理にも負けません。熟成したらきのこのリゾットや熟成チーズへ——これは公式サイトも推す合わせ方です。
私がブラインドテイスティングで飲むと、香りが「ご飯ですよ!」の香りしかしなくて香りでクシノマヴロと思ってしまいます!
■今日から買える、DWWA受賞ワイン(価格は円換算)
デキャンター誌の2026年国際ワインコンクール(DWWA)で高評価だった10本から、手に取りやすそうな4本を挙げます。
← 表は左右にスワイプしてご覧ください →
ワイン | 産地 | 評価 | 価格の目安 |
|---|---|---|---|
アルファ・エステイト「ヘッジホッグ」2023 | アミンデオ | 金賞95点 | 米国小売$27.95≈約4,420円/国内希望小売4,200円前後(税抜)、店頭4,620円程度 |
ミクロ・クティマ・ティトス 2022 | グメニッサ | 金賞95点 | 店頭次第、3,000円前後を目安に |
キリ・ヤーニ「キュヴェ・ヴィラージュ」2023 | ナウサ | 銀賞92点 | 米国小売$23前後≈約3,600円/日本は輸入元モトックス経由で |
ブタリ「レガシー1879」2020 | ナウサ | 銀賞91点 | 店頭次第、3,000円台前半を目安に |
※価格は変動します。米国価格は$1≈158円で換算(2026年10月末の仲値ベース)。「3,000円前後を目安に」とした2本は、コンクール受賞クラスのギリシャ赤としては常識的なレンジです。店頭で確認してください。
バローロやブルゴーニュに近い複雑さを、数分の一の値段で味わえるのがクシノマヴロの良さだと、デキャンター誌も書いています。
■【私のオススメ】キリ・ヤーニ「キュヴェ・ヴィラージュ」
DWWA受賞4本の中で、私がいちばん押したいのはキリ・ヤーニ「キュヴェ・ヴィラージュ」クシノマヴロ 2023(銀賞92点)。
若い世代の初クシノマヴロに、いちばん安全で、いちばん面白い1本です。
ワイナリーの情報
1997年創業。創設者ヤーニス・ブタリス氏は、1879年からワイン造りを続けてきた名門「ブタリ・ワイン」の4代目。ギリシャで初めてガラス瓶詰めを行った老舗の血を引きます
ヤーニス氏は「テロワールを重視した高品質なワインを造りたい」と1997年、ナウサの森の中に土地を買い、畑を一から開墾。
ブタリ・ワインから独立してキリ・ヤーニを立ち上げました。現代ギリシャワインの父と呼ばれ、テッサロニキ市長も務めた人物ですナウサの畑は40の区画に分けて栽培され、単一区画ワイン「ディアポロス」らフラッグシップが生まれる。哲学は「良いワインは醸造所でうまれ、卓越したワインは畑で誕生する」
2代目のステリオス氏(INSEADのMBA)とミハリス氏(ハーバード大→UCデービスで醸造学修士)が兄弟で参画。
ジャンシス・ロビンソンMWや、日本人唯一のMWである大橋健一氏も認めるギリシャ最高峰の造り手です面白いのが環境活動。ヨーロッパ熊の保護にワイン売上の一部を還元しています
ワインについて
キリ・ヤーニの解説によれば、クシノマヴロは「酸(クシノ)と黒(マヴロ)」
——高い酸・豊富なフェノール・力強いタンニンを持ち、「時には数十年も熟成に耐える」品種同じ公式解説で「バローロ(ネッビオーロ)やブルゴーニュのピノ・ノワールに比べられるが、その性格は唯一無二」とされています
キュヴェ・ヴィラージュはDWWA 2026で「ラズベリーとザクロの香りにスパイスとブラッドオレンジ、ゲームYなニュアンス。とても典型的」(92点)と評されました
▶ 購入・商品詳細はこちら(日本公式輸入元:モトックスのワイナリーページ) https://www.mottox.co.jp/producer/winery/001619
■なぜ11月1日なのか
晩熟のブドウなので、ちょうど収穫が終わるころ。そして「北ギリシャの品種ナンバー1」という意味も込めて、11月1日が選ばれました。
今夜、1本開けて「ヤマス(乾杯)」してみてはいかがでしょう。
まとめ:200年遅れたトップスターを、いま飲む
クシノマヴロ=「酸っぱい黒」。淡い色なのに長期熟成型、バローロ級の実力を数分の一の値段で
ナウサ(100%規定)/アミンデオ(高地・泡)/グメニッサ(ネゴスカ配合)/ラプサニ(オリンポス山麓)で性格が違う
2021年にはフランス・プロヴァンスが栽培を許可——気候変動時代に適性のある、次の波
初手の推しはキリ・ヤーニ キュヴェ・ヴィラージュ(DWWA92点)
バローロを飲み始めるより、ずっと気軽な値段から入れる。「渋い赤に挑戦したい若い世代」にこそ、今日はぴったりの記念日です。
著者:ブラインド川西
■用語解説
クシノマヴロ… ギリシャ北部の黒ブドウ品種。酸とタンニンが強く、長期熟成に向く
バローロ… イタリア・ピエモンテの赤ワイン。同じく酸とタンニンが強いことから比較される
タンニン… 渋みのもと。赤ワインの骨格をつくる成分
ナウサ/アミンデオ/グメニッサ/ラプサニ… クシノマヴロの主要産地(アペラシオン)。前3つはギリシャ北部マケドニア、ラプサニは中部テッサリア
アペラシオン(原産地呼称)… 産地名を名乗るための決まりごと。フランスのAOCと同じ考え方
ネゴスカ、クラサト、スタブロト… 現地でブレンドに使われる地元品種
ブラン・ド・ノワール… 黒ブドウで造る白ワイン。クシノマヴロでも造られている
DWWA(デキャンター・ワールド・ワイン・アワード)… 世界最大規模のワインコンクールのひとつ
引用・出典一覧
【本文の参考】
Wines of Greece「International Xinomavro Day」
Decanter「International Xinomavro Day: 10 award-winning wines」(2026年10月): https://www.decanter.com/wine/greece/international-xinomavro-day-10-award-winning-wine/ (記念日の由来、1831年クズネリの評、4アペラシオンの規定、プロヴァンスでの栽培許可、DWWA受賞リスト・テイスティングコメント)
【キリ・ヤーニの情報】
キリ・ヤーニ公式サイト(ギリシャ): https://kiryianni.gr/heritage/xinomavro/ (品種解説・テロワール・ペアリング)
輸入元モトックス「ギリシャを代表するアイコンワイン キリ・ヤーニ」: https://www.mottox.co.jp/producer/winery/001619 (創業の経緯・ブタリス家・40区画・哲学・大橋健一MWの評・熊の保護)
【価格】
アルファ・エステイト「ヘッジホッグ」2023: 米国小売$27.95(Wine on Sale)/ニューヨーク・タイムズ紙で$23ベストバリュー評価(2026年8月);国内希望小売4,200円(税抜)・店頭4,620円(夜明け舎・オイノス各社商品ページ)
キリ・ヤーニ キュヴェ・ヴィラージュ: 米国小売$23前後(Wine on Sale)
為替: 1ドル≈158円(2026年10月末・銀行間仲値ベース)
【画像の出典】
サムネイル: 本コラム用にAI生成(GPT Image 2)
画像_ボトル「Kir-Yianni Naoussa Xinomavro」: B-21 Liquors(https://www.b-21.com/2022-Kir-Yianni-Naoussa-Xinomavro/productinfo/GRKYXY22BE/)
画像_料理「What to Eat in Athens」: Roavina(https://roavina.com/en/what-to-eat-in-athens)



