コラム:【ワイン・スペクテーター年間No.1の兄弟ブランド】。そのブースで、龍のバッジを貰えた 🍷

出会いは、試飲会のブースで
先日書いたカリフォルニアのコラム——名門ワイナリーの倒産と畑の抜根で、今こそ「買い場」だという話。その実例を、私自身がテイスティング会で体験してしまったので、今日はその話をします。
ジェームズ・サックリング氏が主催する世界的なテイスティング会
「Great Wines of the World」の試飲会。
整然と並ぶブースの中に、知った名前を見つけました。
シュレイダー(Schrader Cellars)、そしてダブル・ダイヤモンド(Double Diamond)
——ナパ・ヴァレーのカルトワインとして名を轭かせるシュレイダー・セラーズと、その兄弟ブランドです。
ブースに立っていた方のネームタグには、こうありました。
BOOTH 100 / Andrew Bradbury / Schrader, Double Diamond
■左の人は、アンドリュー・ブラッドベリー

「左の人、誰だろう?」——それがこのコラムを書き始めた動機です。調べたら、ただ者ではありませんでした。
ソムリエとしてキャリアを始め、ラスベガスの名レストランチャーリー・パーマー「アウレオレ」のワインディレクターを務めた。
ここで彼は、マイクロソフトとHPと組んで「世界初のワイヤレス・ワインリスト」を導入
——タブレットでワインリストを操作する、あの今のスタンダードを作った本人ですニューヨークのクロー・ワインバー、香港のアモ・エノを立ち上げた起業家でもある。
ホテルではマンデレイ・ベイ、キンプトン・ホテルズ、シェフ・マイケル・ミナの飲料部門を統括受賞歴は、料理界のアカデミー賞ことジェームズ・ビアード賞(優秀ワインサービス賞)と、ワイン・スペクテーターのグランドアワード
現在はナパに移住し、シュレイダー・セラーズのブランドアンバサダーとして世界を回りつつ、自身の新しい取り組み「Terre Sonic」でワインとサステナビリティの交点を探っています
ワインリストのデジタル化という「今のワイン体験」を作った人物が、ナパの伝説ワイナリーの顔として東京のブースに立っていた——という出会いでした。
記念にいただいたのは、龍のバッジ。これが実に意味のある龍だった、という話は後で。
■シュレイダー・セラーズ:元エースの組み合わせが生んだ伝説
まずワイナリーの全体像を。
1998年、創業者フレッド・シュレイダーが自らの名を冠して創業
ワインメーカーはトーマス・リヴァース・ブラウン。
2000年、まだ1本もカベルネを造ったことのない彼が、地元のワインショップで働いているときにフレッドと出会い、大抜擢。
「手も足も出ないほど(no holds barred)の最高級ワイン」という共通の夢でチームが組まれました。結果、フラッグシップ「オールド・スパーキー」(ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤード)は、ロバート・パーカー氏から繰り返し満点評価を得たと語り継がれる伝説のカベルネに。
2017年、コンステレーション・ブランズ傘下へ。
ロバート・モンダヴィの親会社になったことで、「伝説の畑ト・カロンをモンダヴィと共有できる」という嬉しい副産物が生まれます。
兄弟ブランド「ダブル・ダイヤモンド」の物語
ダブル・ダイヤモンドは2度生きています。
1度目は2001年。オークヴィル以外のベクストファー畑からも最高のカベルネを、という狙いでスタートし、2013年までの12年間、熱狂的ファンを集めました。
2度目が2017年の復活。コンセプトはこうです。
「オークヴィルの畑限定の、最高のカベルネ・ソーヴィニヨンを、可能な限り手の届く価格で。」
葡萄は伝説のト・カロン・ヴィンヤード主体、醸造はシュレイダーと同じトーマス・リヴァース・ブラウン。この取り組みが世間にどう響いたか——ワイン・スペクテーター誌の2022年年間TOP100で、見事第1位(ワイン・オブ・ザ・イヤー)に選ばれました。
同誌は「高価なボトルの多いこのカテゴリーで、品質と価格の魅力的な組み合わせ」と評しています。
他のト・カロンのワインが数十万円の世界であることを考えれば、この1位には説得力があります。
オークヴィルという「ナパの真ん中」
オークヴィルAVAは、ナパ・ヴァレーのほぼ中央、ヴァカ山脈とマヤカマス山脈の間。オーパス・ワン、ト・カロン、ハーラン、スクリーミング・イーグル——世界のカベルネ好きが知らないものがない銘醸畑たちがひしめく土地です。その名をラベルに並べてよしいわば「ナパの顔」なのです。
■ラベルの龍と、バッジの龍

2021年ヴィンテージから、ダブル・ダイヤモンドのラベルはシュレイダーと同じフォントのシックな白黒にリニューアルされました。そしてラベルには「龍」の絵がエンボス加工されています——これはシュレイダーのフラッグシップ「オールド・スパーキー」の絵柄なんです。
ブラッドベリー氏からいただいた龍のバッジは、つまりこのラベルの龍と同じ魂の一举。
テイスティング会の記念品として以上に、「シュレイダーの家のドラゴン」をいただいたという意味で、大事なコレクションになりました。
ちなみにこの日、ブースで味わったもう1本が写真②のシュレイダー「モナステリー・ブロック」(ト・カロン・ヴィンヤード、カベルネ・ソーヴィニヨン100%、限定品)。
説得力のある骨格と、エレガントさの同居した味わいでした。
■【私のオススメ】ダブル・ダイヤモンド カベルネ・ソーヴィニヨン オークヴィル 2023

推しは、 WS年間No.1の血統をそのまま受け継ぐこの1本。
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%(オークヴィル・ナパ・ヴァレー)
醸造:フランス産オーク樽で19ヶ月熟成(新樽比率52%)(ブースの解説カードより)
味わい:濃厚で力強いナパ・カベルネでありながら、開けたてからすっと美味しい。
ブラックベリーの果実味、オークの華やかさ、シルキーなタンニン。
ト・カロンの「血統」を1万5,000円前後で味える、破格の入門編です
価格:米国小売で80ドル前後(約12,600円)。
日本の実売は14,000〜16,000円前後。
先週書いた「カリフォルニアの買い場」論のちょうどいい実例でもあります。
高騰を続けるナパ・ヴァレーのカベルネの中で、WS年間No.1の兄弟ブランドが1万円台半ばで買える——需給が反転する前に、確保しておきたい1本です。
▶ 購入・商品詳細はこちら(日本公式輸入元:中川ワイン) https://nakagawa-wine.co.jp/product/double_diamond_cabernet_sauvignon_oakville_napa_valley_2023/
まとめ:龍が棲むナパの伝説を、入門編から
シュレイダー=1998年創業、トーマス・リヴァース・ブラウン醸造、伝説の「オールド・スパーキー」を持つナパのカルトワイナリー
兄弟ブランド・ダブル・ダイヤモンドは「オークヴィル限定・ト・カロン主体・手の届く価格」がコンセプトで、WS2022年ワイン・オブ・ザ・イヤー獲得
ラベルの龍はオールド・スパーキーの絵柄。バッジの龍とつながる
左の答えはアンドリュー・ブラッドベリー氏
——世界初のワイヤレス・ワインリストを作ったソムリエ界のイノベーター推しはダブル・ダイヤモンド 2023(約15,000円)。入門編にして本物
ナパ・カベルネは「いつかの特別な日」のワインだと思っていませんか。
少なくともこの1本は、「金曜日の夜」でいい——それが龍のラベルと共に約束されている気がします。
著者:ブラインド川西
■用語解説
シュレイダー・セラーズ… 1998年創業のナパ・ヴァレーのワイナリー。カルトワインの代表格
カルトワイン… 生産量が少なく、評判が高くて入手困難なワインの俗称
オールド・スパーキー… シュレイダーのフラッグシップ。ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤード産のカベルネ。龍の絵柄で知られる
ト・カロン・ヴィンヤード… オークヴィルにある伝説の畑。ロバート・モンダヴィの旧本拠地。現在はベクストファーとモンダヴィが区画を所有
AVA(アメリカ原生地呼称)… 米国の産地表示制度。オークヴィル、ソノマ・コーストなど。フランスのAOCの考え方に近い
コンステレーション・ブランズ… 米国の巨大飲料グループ。ロバート・モンダヴィやシュレイダーを傘下に持つ
引用・出典一覧
【本文の参考】
Pebble Beach Food & Wine「Andrew Bradbury, Winemaker (Schrader Cellars / Double Diamond)」: https://www.pebblebeachfoodandwine.com/winemaker/andrew-bradbury/ (ブラッドベリー氏の経歴:アウレオレ・ラスベガス、クロー・ワインバー、アモ・エノ、ジェームズ・ビアード賞、WSグランドアワード、Terre Sonic)
Double Diamond 公式サイト「About Us」: https://doublediamondwines.com/pages/about-us (トーマス・リヴァース・ブラウンの経歴・2000年の出会い)
中川ワイン(日本輸入元)「DOUBLE DIAMOND」生産者ページ: https://nakagawa-wine.co.jp/producer/double_diamond/ (1998年創業・2001年ブランド誕生・2013年まで・2017年コンステレーション傘下・オークヴィル限定コンセプト・WS2022年No.1・2021VTラベルの龍エンボス=オールド・スパーキー絞柄・オークヴィルAVA解説)
【価格】
米国小売80ドル前後(ワイン・キングダム「ワイン・スペクテーターの2022年トップに輝いた…」記事:米国$80・日本1万4,080円); GQ JAPAN(2024年11月22日): 1万6,280円; 価格コム: 14,900円(2023VT・正規輸入品)
為替:1ドル≈158円(2026年10月末・銀行間仲値ベース)




