世界ブラインドテイスティング選手権2026 / 日本代表の挑戦

初めに
最後の一杯まで、日本が世界の頂点を争った。
今回、日本代表として世界の舞台に挑んだのは、大倉野泰造さん、片山正樹さん、横山武信さん、田尻智之さんの4選手。
泰造さん、片山さん、横山さんの3人に、今年初参加の田尻さんが加わったチームだ。この4人が、最後の一杯まで優勝を争い、日本に過去最高の準優勝をもたらした。

泰造さん、片山さん、田尻さんら日本トップクラスのテイスターとブラインドテイスティングをした時の写真

私と横山さん
―181点、過去最高の準優勝が伝えるもの―
「惜しかった」のひと言では、もったいない。最後のワインを前に、日本は世界の先頭にいた。
2026年10月17日、フランス・アヴィニョンの教皇宮殿で行われた世界テイスティング選手権。
41チームが競うなか、日本は181点を獲得し、過去最高の2位に入った。
優勝したフランスは189点。3位のブラジルは159点だった。
結果だけを見れば、フランスに8点届かなかった大会だ。しかし、その経過をたどると、私には「日本が優勝を現実のものとして争った大会」に見える。
準優勝を喜ぶ気持ちと、それでも勝ちたかったという悔しさ。
その両方が、この結果の重みを物語っている。
私はリアルタイムでこの大会を見ていたが、本当に手に汗握る死闘を繰り広げていた。
難しい出題のなかで、日本は2度首位に立った
競技は12種類のワインをブラインドで味わい、ブドウ品種、国、原産地呼称、ヴィンテージを答えるもの。
最初の1本から、2010年のルクセンブルク産クレマンという難問だった。
このワインで得点できたのは、フランスだけだったという。
日本が最初に首位へ躍り出たのは、4番目のシェーファーのシャルドネ。
18チームが無得点だったこのワインを終え、日本は中国を上回ってトップに立った。
前半6本終了時点でも、首位フランスの86点に対して、日本はドイツと並ぶ84点。
勝負圏内をしっかり保っていた。
後半、7番目のクローズ・エルミタージュでドイツが先頭に立つ。
しかし8番目のシャトー・カペ・ギリエでは、日本がこのワインの最高得点を獲得し、再び首位へ。
続くブルネッロ・ディ・モンタルチーノでも、ブラジルと並ぶ最高得点を記録した。
フランスとの差は5点。そのリードは、11本目を終えるまで続いた。
171対166。最後のマデイラが勝負を分けた
残るは1本。日本171点、フランス166点。最後に供されたのは、ブランディーズのセルシアル、10年熟成のマデイラだった。
ここでフランスは23点、日本は10点。
この1本で生まれた13点差が、日本の5点のリードを上回り、最終結果はフランス189点、日本181点となった。
選手の方に聞いた話なのだが、日本チームは最後までボアルかセルシアルかで揺れていた。
一方で、持てるパフォーマンスを発揮できたこと、チームとして高い集中力を保てたことも語っている。
結果を知ってからなら彼らからすれば簡単に見える二択も、優勝がかかる最後のグラスでは、まったく違う重さだったはずだ。
私、ブラインド川西が注目したいのは、181点を積み上げた力
最後の一杯に目が向くのは当然だと思う。
それでも、日本の戦いを「最後に外した大会」だけで終わらせたくない。
日本が品種を外したのは最初のクレマンと最後のセルシアルだけ。
途中のワインで品種を捉え続け、ボルドーやブルネロでは、1本の最高得点も取っている。
これは、最終順位と同じくらい印象に残る内容と私は思います。
私には今回の準優勝が、「世界に近づいた」というより、
「すでに日本は世界の頂点を争う場所にいる」ことを示したように思える。
だからこそ悔しい。そして、その悔しさを伴った181点を、まずは大きな拍手を送りたいと思う。
この世界大会は、私の夢そのもの
今回の結果が、私にとってこれほど特別なのには理由がある。世界テイスティング選手権は、私自身がいつか立ちたいと願っている舞台だからだ。5年以内に日本代表になる。それが、私の夢であり、目標でもある。
そして、今回世界2位になった4人は、遠い世界の選手ではない。全員が、ブラインドテイスティングを通じてつながった、私の知る方々だ。尊敬する先輩であり、同じワインに向き合う仲間でもある。
泰造さんと田尻さんは、同じ日本ブラインドテイスティング協会の仲間。片山さんは、私にとって東京のブラインドテイスティングを切り拓いてきた先駆者の一人であり、2026年の第10回全日本ブラインドテイスティングコンテストの優勝者でもある。私自身、何度か一緒にブラインドテイスティングをさせていただいた。横山さんとは、今回の世界大会のわずか1週間ほど前にも、同じ場でワインに向き合っていた。
そんな方々が、世界2位になった。
私は関西から東京に出てきて、ブラインドテイスティングを通じてワインを学んできた。今回の結果を知り、これまで身近にあった学びの場が、世界につながっていたのだと改めて実感した。自分が世界レベルになったという意味ではない。世界で戦う方々の考え方やワインへの向き合い方に、日頃から触れられていた。その環境のありがたさを、4人の活躍が教えてくれたのだと思う。
憧れるだけで終わらず、次の世代へつなぎたい
この準優勝は、私のような若い世代にとっても、大きな刺激になる。
少なくとも私が参加してきたブラインドテイスティングの場では、年上の方々から学ぶ機会が多い。
その豊かな経験に支えられていることに感謝しながら、これからは若い世代にも、この面白さや挑戦する楽しさを伝えていきたい。
先輩方から学んだものを、自分のところで止めたくない。
私自身が挑戦する姿を見せ、次の世代が一歩を踏み出すきっかけになりたい。そしていつか、
仲間とともに日本代表として世界一を勝ち取りたい。
そのためにも、まずは私自身が、この4人に実力を認めてもらえるようになること。
知識を積み重ね、一杯一杯に真剣に向き合い、判断の精度を磨いていく。
憧れを口にするだけでなく、その舞台に立つにふさわしい力を身につけていきたい。
4人の準優勝を、心から祝福したい。そして5年以内に、私も日本代表として、あの舞台へ。
出題ワイン全12本(ワイン動画は泰造さんからいただきました・・・ありがとうございます!)
← 表は左右にスワイプしてご覧ください →
順 | 生産者・ワイン名 | 年 | 国・産地/品種 |
|---|---|---|---|
1 | シャトー・ポケ | 2010 | ルクセンブルク/クレマン・ド・リュクサンブール |
2 | ハーテンバーグ | 2025 | 南アフリカ/ステレンボッシュ |
3 | グロセット | 2023 | オーストラリア/クレア・ヴァレー |
4 | シェーファー | 2024 | アメリカ/カーネロス(ナパ・ヴァレー) |
5 | フランソワ・シデーヌ | 2024 | フランス/モンルイ・シュル・ロワール |
6 | ツィアアイゼン | 2021 | ドイツ/ラントヴァイン・オーバーライン(バーデン) |
7 | ドメーヌ・コンビエ | 2024 | フランス/クローズ・エルミタージュ |
8 | シャトー・カペ・ギリエ | 2020 | フランス/サン・テミリオン・グラン・クリュ |
9 | フレスコバルディ/カステルジョコンド | 2020 | イタリア/ブルネロ・ディ・モンタルチーノ |
10 | ロンユー・エステート | 2020 | 中国/寧夏 |
11 | フアン・ヒル | 2023 | スペイン/フミーリャ |
12 | ブランディーズ | NV | ポルトガル/マデイラ |



順位
順位 | チーム | 得点 |
|---|---|---|
1 | フランス | 189 |
2 | 日本 | 181 |
3 | ブラジル | 159 |
4 | ドイツ | 155 |
5 | アメリカ | 140 |

